購入すれば非常に高価なものを安価で導入できる福祉用具貸与の制度。様々なものがレンタルできる反面使用にはメリットはもちろんのことデメリットも出てくることがあります。
今回は福祉用具貸与を実際行うにあたり、初回の導入までの手順や使うことでどんなメリットやデメリットが生じてくるのか?またよくレンタルされているものの少し細かな分類を相談員として勤務したことのある経験から見ていきたいと思います。
- 福祉用具貸与までの手続きを知りたい。
- 利用するにあたってのメリットやデメリットを知りたい。
- 貸与できる用具にはどんな物があるか詳しく知りたい。
福祉用具貸与開始までの手順
実際に福祉用具貸与を開始するまでには所定の手順を踏んでいく必要があります。ではどういった手順を進めればいいのでしょうか。一般的な手順と注意点などを踏まえて見ていきましょう。
- ケアマネージャもしくは地域包括支援センターに相談
- ケアプラン作成と福祉用具貸与事業者を選定
- 福祉用具専門相談員が利用者宅を訪問し用具の選定と提案
- 用具の決定、利用者と貸与事業者が契約
- 正式に貸与サービスの開始
上記は貸与までの流れを簡単に表した物となっています。
まずは相談
介護保険の利用有無にも関わってきますが、まずはケアマネか役所の福祉課、地域包括支援センターに相談しましょう。介護保険の利用を今までしていなかった場合として、この手順の最初に介護認定を受けることが追加されるので実際に借りるまでの期間は少し変化する場合や手順が少し増えることが多いです。(介護認定までの期間は暫定介護度の扱いであり、確定後に再度会議を行う場合があるため)
相談が終わったら業者を選んでプランを作る
相談が終わったら貸与に向けたプラン作成と事業者の選定になります。基本的には担当ケアマネが大体の調整や業者の選定は行ってくれます。日程やどういった方向性で行きたいのか聞かれることが多いと思いますので希望や要望は予めまとめておきましょう。注意点ではないですが、福祉用具貸与事業者はあくまで「認可のあるレンタル業者」という点です。つまりは事業者ごとに取り扱いの幅や値段にも違いが出てきますのでそこも考慮に入れると良いでしょう。
実際に用具相談員が来て本人や利用場所を見てもらおう
業者の選定が終われば実際に担当の福祉用具相談員が訪問を行い家や利用者の状態の確認やそれに合わせた用具の提案を行っていきます。カタログや実際に見て提案してくれるので不安なことや気になることは遠慮なく聞きましょう。また基本的にはある程度の情報を担当ケアマネと共有していますので場合によってはサンプルを持参してくれる場合もあります。(必ずではないし持ち運びが可能な範囲なものに限る)ケアマネが同席してくれることもありますがしない場合もあります。不安な場合は同席をお願いした上で日程を調整すると良いでしょう。
実際に選んだ用具の納品と契約、サービス開始
訪問と調査や提案で用具が決まったあとはいよいよ用具の納品と設置になります。基本的にはこの際に事業者と貸与に関しての契約を行います。契約を済ませてしまえば実際にサービスが開始され、当然のことながら利用料が発生しますので事前にどれくらいの料金がかかるのかを聞くのを忘れないようにしてください。
業者にもよるでしょうが調整や具合の確認のために早めに納品を行い実際の契約は少し後に行う場合や料金のかからないお試し期間を設けてくれる場合もあります。いつから料金が発生し始めるのかなどの確認は契約前に確認しましょう。
サービス開始後は
契約を済ませて本サービス開始後は定期的に福祉用具相談員が訪問を行い、用具のメンテナンスや交換、状態を見た用具の再提案などを行います。何か変化があった場合や用具に不具合が起こった場合などは連絡を行えば都度対応してくれるので気軽に相談してみましょう。直接でなくとも担当ケアマネを通しても問題ありません。
サービスを終了する場合
何らかの理由で福祉用具貸与を終了する場合は直接事業者かケアマネへ連絡しましょう。相談員が所定の手順に従ってサービス終了に手続きを行います。
貸与のメリット・デメリット
福祉用具貸与も便利ではありますが利用することに関しては当然メリットたデメリットも存在します。ではどのようなときにそういったことが感じられるのでしょうか。ここでは使用にあたり考えられるメリットデメリットを考えて見ます。
使用に関してのメリット
- 購入すれば高額な福祉用具を低価格で導入することが可能。
主に大物の家具系に用具に関してはこれが当てはまります。介護ベッドは低価格のものでは30万程度するものが殆どで簡単に手が出せるものではありません。その点レンタルであれば料金設定にもよりますが1~3割の負担で導入することが可能です。(レンタル料金は業者により異なる)
- 定期メンテナンスや不具合の際は交換対応が可能。
貸与で用具を導入した場合は基本的に無料でメンテナンスサービスを受けることが可能です。また使用していて不具合が起きた場合には商品そのものを丸ごと交換することもできるためテクニカルな面では安心した利用が可能です。(長期間使用でヘタリが出たマットレスも無料で交換できる)
- 試験的な導入を低コストで行える。
杖や歩行器など購入に関してさほど負担が大きくないものに関してもレンタルが可能です。貸与を利用する際は実際に購入する前に似たような商品をレンタルして使い心地などに問題がないかを確認することも可能です。(ただしそういった利用の場合早期に返却しても1ヶ月分の料金を支払う必要があるといった店はあるため注意が必要)
使用に関してのデメリット
- レンタルするものに関しては購入より高額になる場合がある。
これはメリットの低価格でレンタルとほぼ反対のことと言えます。利用する方がどれくらいの期間使用し続けるかによって実際の料金総額は変わってきますので、レンタルの総額が買った際の総額を上回るのであればその分損することになります。元の購入価格が低いものであればこの減少は起きやすいです。(杖や歩行器は比較的起きやすい場合がある)
- レンタル品は新品というわけではない。
これはそのままの意味です。レンタルのDVDやCDは毎回新品を渡すわけではなく消毒や修理などを行ったものを使いまわして行くと思います。福祉用具貸与に関しても基本的には同様です。CDなどでは気にならないかもしれませんが、徹底して消毒修理をしているとはいえ、長時間直接肌に触れる、場合によっては介護に関するあれこれをしたもの…となりますのでその辺を忌避する人は少なくないでしょう。これはそういった面ではデメリットと言えます。
- 自分の物になるわけではない、レンタルであるので使用には注意が必要。
これもそのままです。あくまでレンタルでありリースではないのでいくら長期間使用しても手に入るわけではありません。また場合によっては修理代金を請求される場合もあるので丁寧に使用する必要があります。(故意の破損は当然ですが、回収時に部品が足りない、通常の想定で使用される以外の破損や欠損が出た場合などで請求される場合もあります)
貸与できる用具
福祉用具貸与で実際に借りることができる用具の品目は全部で13種あります。ただその種別の中にも様々な物がありよくレンタルされるものとそうでないものや同じ車椅子でも昨日が異なってくるものなど様々あります。ここでは主に比較的よくレンタルされる種別とその中でもどんな機能を持ったものがあるのかを紹介していきます。
他の種目を参考にしたい場合はこちらを参照してみてください
車椅子
福祉用具の中でも最もメジャーなものでしょう。レンタルされる頻度も高いものになります。そんな車椅子も昨日別に分類するとそれなりの種類があります。基本的に車椅子の機能が多くなればなるほど重量は増加し、レンタル料金も高くなります。
- スタンダード型
病院などでよく見る形の最もよく知られる車椅子です。軽量型や高床式、幅広のワイドタイプや逆の小型などシンプルなものがほとんどです。機能面は最低限ですがフットレスト(足部分)が外せるものやアームサポート(肘掛け)が跳ね上げ式で移乗が楽なものが存在します。
- モジュール型
通常の車椅子は車椅子の形式が決まっており、容易に座面やその他高さの調整をできないようになっています。モジュール型と呼ばれる車椅子はこの機能に注目して比較的容易に、もしくはワンタッチで調整できる機能を搭載したタイプの車椅子です。物によっては車椅子のタイヤ部分まで分解できるものがあり利用者にきっちり合わせた車椅子に調整できることがこの車椅子の大きな特徴です。
- リクライニング型・ティルト型
レバー操作によって車椅子の角度を変えることができるタイプです。リクライニングは背部分を倒す機能。ティルト式は座面部分全体を傾ける機能です。寝たきりの人の介助に使われることが多いですが機能の関係で車椅子の中では大型となっています。
スタンダードタイプ リクライニング・ティルト型
介護用電動ベッド
介護ベッドもレンタルではよく出る福祉用具になります。ここで言われる介護ベッドとは基本的には電動式のものになります。こちらも機能が増えるごとに重量や料金が高くなる傾向にありますが機能の多さは主に使っているモーターの数である程度決まってきます。
- 1モーターベッド
介護ベッドの中では最もシンプルなものです。「背上げ機能」もしくは「高さ調節機能」のどちらかができるタイプがこれに当たります。背上げ機能のみの1モータベッドは足上げ機能を連動させることができる仕組みがあり、セットすれば背上げ時に足も同時に上げることが可能です。ただしこの連動機能は手動で設定を行うため、どっちか片方だけ、ということはできないので注意が必要です。
- 2モーターベッド
「背上げ機能」と「高さ調節機能」が一緒に搭載されたタイプのベッドです。背上げと連動した足上げはこちらでも使用できますが注意点は同様です。
- 3モーターベッド
上記までのすべての機能を個別で操作できるタイプです。このタイプはベッド上で過ごすことが多い方におすすめするタイプのベッドです。この他にも更に細かく角度をつけるための機能を追加した4モーターベッドも存在します。
- 低床、超低床型
こちらは高さを限界まで低くできる機能があるタイプのベッドです。通常のベッドは限界まで下げても必ずベッド下に空間ができますが超低床に関しては本体が床に付くまで下がるのが特徴です。就寝中の転落保護などの不意の事故防止目的でよく利用されています。
4モーター型介護ベッド
ベッド周辺機器
介護ベッドに付属する品目です。ベッド自体にはレンタルしても付属機器は一切ついてきませんので必然的にサイドレールなどの周辺機器もよくレンタルされます。
- サイドレール
転落防止のために使用されるよく知るベッド柵です。このサイドレールにも病院でよく見る1本型の他に立ち上がり補助を目的としたL字型に動かすことのできる「スイング式」などがあります。
- オーバーテーブル
ベッド上やベッドサイドで食事をするために主に使用されるテーブルです。病院でよく見かけるのは「サイドレールにかけるタイプ」か「片側にのみ支柱がついて差し込めるタイプ」です。この他にも「両サイドに支柱があり完全にベッドと交差するタイプ」もあります。
L字型サイドレール
マットレス関連
ベッド利用となればやはりマットレスも同時にレンタルされる商品になります。機能は様々ですが介護用は通常のものより除圧・圧分散の機能が優れたものがほとんどです。またマットレス使用の注意点ですが、基本的にはマットレスの上には布団は使用しないほうが良いです。使用の前提としてマットレスの上に直接(シーツなどはするが)寝ることを前提としていますので厚手の敷布団などを使用すると本来の機能を発揮しない場合があります。また熱でマットレスの中身が変容してしまう可能性があるため電気毛布なども使用は控えたほうが良いでしょう。
- 通常タイプ
品目上ではベッド周辺機器に属するタイプのマットレスで、感覚的には市販品に近いものが分類されます。あくまで近いというだけで機能面では高く、使用されている素材もかなり様々です。表裏で硬さが違うリバーシブル、中身をパーツごとに分けある程度自由に硬さを選択できるものがあります。
- 床ずれ防止マットレス
こちらは床ずれ防止に特化したマットレスの分類になり、通常のものより高機能なタイプです。エアマットレスもこちらに分類されます。エアマットレスはセットすれば自動で圧の切り替えを行ってくれるため優れた効果を発揮する場合が多いですが、その分値段も高いです。
静止型マットレス エアマットレス(どちらも床ずれ防止マットレス)
手すり
福祉用具貸与でレンタルできる手すりは基本的に工事を伴わないものとなっています。工事をしない分固定力は若干劣るものの手軽に利用や撤去ができるため玄関の段差の不安解消などにレンタルされることが多い品目です。
- 置型手すり
地面において使用するタイプの手すりで設置も基本的に置くだけとかなり簡単です。共通として床面が鉄板になっておりかなりの重量があります。玄関用は専用に段差の上に固定する部分があり床板+段差上に突っ張りで固定するものが多めです。形も様々でトイレ用にフレーム型手すり、ベッドサイドに差し込めるように鉄板と手すりが組まれているものがあり、追加のパーツで手すりを追加してL字にするものもあります。欠点としてはフレーム型以外は下に鉄板が設置される関係である程度スペースが必要になることです。
- 突っ張り棒(ポール)型
床と天井に突っ張って固定することで使用する手すりです。突っ張りに関しては丸形や一の字形、十字などがあり家の作りに合わせて設置が可能でスペースも取りません。デメリットとしては掴む場所を設置や玄関段差に対応となると基本的には追加パーツが別途必要でコストが嵩む可能性があります。その分追加のパーツや組み合わせはかなり広いのでこれをどう取るかは人によって変わってくるでしょう。
玄関段差用手すり ポール(突っ張り)型手すり
まとめ
福祉用具貸与を行うにあたっての手順やメリットデメリットを見てきました。実際にレンタル開始までにはそれなりの時間がかかり、利用には不安がついてまわると思います。またどんな福祉用具でも先が見えない以上、実際に買うより高くついてしまう場合が結構な割合で発生してしまうことも事実です。その不安を解消するために担当のケアマネや福祉用具相談員がいますので困ったことや不明な点があれば気軽に相談してみましょう。